2007年11月10日土曜日

佐川美術館の楽しみ方

今回は、滋賀県にある水庭の美術館ー佐川美術館の楽しみ方を紹介します。

この美術館は、1998年3月に開館した新しい美術館です。

展示作品は、彫刻家の佐藤忠良、日本画家の平山郁夫、陶芸家の樂吉左衛門の3人の巨匠の作品だけに絞り込んでいます。

特別展示会を開催する美術館が多い中で、常設展示で勝負をしているこの美術館は実にいいですね。

最初は、佐川というイメージが私の頭の中で先行しており期待はしていなかったのですが、すばらしい美術館でした。

特に今年9月にオープンした樂吉左衛門館ー守破離は空間・光と闇・陶芸の3つのバランスが最高の芸術空間を構成しています。お勧めの美術館です。



楽しみその1) 水庭と建物を楽しむ

この美術館は、建築物として2つの国際的な賞(イタリア国際大理石・加工機会協会インテリア部門、国際デザイナーズ協会賞)をもらっている美しい建物です。夜はライトアップされますので、今度行くときにはその幻想的なライトアップを見たいと思います。

まず、受付は美術館の外にあるゲイトにありますので、そこで入場券(千円)を購入し、入ります。

美術館全体は、水庭(人口池)で囲まれ、水に浮かんでいるように見えます。
最初に佐藤忠良の両手を大きく開いているビーナスと蝦夷鹿が出迎えてくれます。

エントランスホールを抜けると両側には、水庭が見え、右には佐藤忠良の「冬の像」がたたずんでいます。

レストランの待合椅子に腰掛けて、ゆっくり見るのは気持ちがいいものです。


その後で、美術館の中を周回してみませんか。
長い廊下は、スリット照明と水庭の光の反射で美しい空間を作り出しています。
その光をゆっくり歩いてあじわいましょう。



楽しみ その2) 佐藤忠良館(ブロンズの歌)

日本を代表する彫刻家佐藤忠良の作品が100余点収集され、その中から約40点が展示されています。

帽子・夏やボタン等すばらしい作品が展示されていますが、今回私が紹介するのは「建築家(1957年)」です。

佐藤は弟の建築家忠行の顔を作品として制作しました。
作品の背後には次のような佐藤の言葉が書いてありました。

「弟(建築家)の顔を制作したときも、デスマスクみたいに、石膏の中に顔をつっこんで型をとってやれば、顔の寸歩どおりになるはずです。しかし、彫刻家は粘土で自分なりの造形する。弟の過去と今、そしてこれからの変化、考え方、生き方が顔になにかプラスするかもしれない、マイナスするかもしれない、と自分なりに想像して、おこがましくも過去と現在、未来までも動かない粘土に語らせようとするのです。」

日本人の独特の顔を内面から捉え、その人の人生の過去、現在、未来までも表現しようとした佐藤の心意気には凄いものがあります。

彫刻家はこのような視点で作品を制作するということがじっくり感じることができる作品です。
顔の前で、鑑賞者として、この作品の過去、現在、未来をいろいろと想像しながら見ることも実に楽しいものです。

楽しみ その3) 「平和への祈り」 平山郁夫館でシルクロードを味わう











シルクロードをテーマとして制作された作品300点の収集の中から、現在約50点が展示されています。広島での被爆体験をした平山の作品は、テーマはシルクロードですが、心の深いところで平和を祈る魂の声がしてきます。

展示室はそれぞれのテーマごとに、西アジア、中央アジア、インド、中国、日本別れて展示されています。

私が感動した作品は、上図のインド・ザイサルメールのアンベール城を描いた「故城下村民帰牧図(2002年)」です。

城のどっしりとした重量感と仕事が終わって家路につこうとしている農民たちと牛の姿が描かれています。壮大な風景の中にもくもくと歩いている農民たちの姿が対照的に描かれています。

柔らかな光の中にも、永遠の時間を感じさせる作品です。

そして、全体の黄色と空の青がなんともいえないバランスをかもちだしていますね。

この作品を展示している部屋は、現在大作3点のみが展示され、それをじっくり鑑賞するための椅子が用意されています。そこに座ってゆっくり大作を鑑賞するものいいですね。


楽しみ その4) 樂吉左衛門館 守破離(守りをつくして 破るとも 離るるとても 本をわするな)

最近、直島の地中美術館のように、立てられた美術館に絵を配置するという考え方ではなく、その芸術作品を最高の形で鑑賞するにはどのような美術館でなければならないのかを考慮した美術館が建てられはじめています。

15代樂吉衛門は、陶芸家自身が自分の作品をどのような環境で展示したらその芸術性を最高度に発揮できるかを創案し、この館を建てました。



エントランスを入り右へ進んでいくと、そこに地下行くための階段があります。 階段を通り抜けると、大きな暗い空間が広がり、木製の椅子やテーブルのようなオブジェがあります。

そうして、その先にほとんど照明がない暗闇の中に、陶芸作品だけに光をあびせて展示しています。

作品の美しさと演出に、私は思わず「これは・・・・・・」とため息をついてしまいました。


伝統に中にモダンなデザイン性をもっている樂吉衛門の作品は、最高の場所で光り輝いています。

そのような作品の中に、竹を切った筒の中に一輪の花が飾られていることにほっとした空間を見つけました。

このような完璧に考え抜かれたこの空間は、私を沈黙の中に引きずり込んでしまします。

● アクセス

   JR琵琶湖線守山駅より近江鉄道バスに乗り換え(約30分 @450円) 

合掌 山さん

2007年10月26日金曜日

姫路市立美術館の楽しみ方

右の写真は、まさに、圧倒的なパワーで上から剣を振り下ろす瞬間をブルーデルが作品に作り上げた「モントーパンの戦士」1898年~1900年)です。

今回は、この作品が設置されている「姫路市立美術館」の楽しみ方を紹介します。

この美術館は、明治末に建築され旧陸軍が兵器庫及び被服庫と使用していたものを、戦後市役所として利用し、1983年に美術館として再生した建物です。
そのために、外観は赤レンガで作られて、その色は世界遺産の姫路城の白と申し分のない美しい対比を持っています。

1)その楽しみ方1 姫路駅から散歩しながら美術館に行く

JR姫路駅を降りて、姫路城を正面に「大手前通り」があります。

この通りは、「日本の通り100選」に選ばれた美しい通りです。道幅は50mあり、両側の歩道は、野外彫刻が20体ほど設置され、それをゆっくり味わいながら姫路城へ約1kmを散歩をしましょう。

15分ほど歩くと、目の前に姫路城の正門があります。その門を抜けて見る姫路城はまさしく「白鷺城」ですね。
城の右側に小さな動物園がありその間を通り抜けると美術館があります。


2)その楽しみ2 庭園を散歩する

美術館の前は、約1万mの庭が広がっています。そこに、野外彫刻が13体設置されています。 正面には、最初に紹介したブルーデルの作品があり、その前に木内克の「エーゲ海に捧ぐ」が配置されています。

右の写真は、美術館を正面にして、庭園の右側に展示されているのが、桑原巨守(くわはら ひろもり)の「姉妹」です。

「姉妹」の暖かい家族の絆を感じる作品です。見るものの心があったかくなってきます。すがすがしい気分になります。

野外彫刻の問題点のひとつは、メインテナンスをどのようにするかにあります。野外にあるわけですから、自然の影響(鳥の糞の汚れ、落書き、傷つけ等)を直接うけます。

しかしながら、庭園にある作品は、すばらしいメインテナンスがされていました。それはこれらの彫刻をメインテナンスしているボランティアグループのSWGの存在があると知りました。いつもきれいな作品を見てせていただいて、感謝します。SWGにもなさん、ありがとうございます。


3)その楽しみ3 常設展示室「國富奎三コレクション」

姫路の医師である國富奎三より約50点の絵画が寄贈され、現在その中の29作品が常設展示されています。

コローの湖に始まり、マティスのジャズまで、近代から現代にかけてのフランス絵画が作成年代順に展示されています。

今回私が好きになった作品は、ディフィの「ミシェル・ビヌーの肖像」です。

背景のブルーがとても印象的です。全体の50%はブルーです。それとシャツの白、チョッキの赤がとてもきれいです。

この少年のどことなく憂い憂いらしさが感じられるさわやかな絵ですね。


姫路市美術館の特徴にひとつとして、郷土の画家とベルギー絵画の収集にあります。デルヴォーやマグリッドをはじめとして多くの作品が収集されていますので、今後の常設展示が楽しみです。


4)その楽しみ4 企画展「シュルレアリスム」

9月15日~10月28日まで、「シュルレアリスムー謎をめぐる不思議な旅」と題して、代表的な作品約130点を展示しています。

時系列にシュルレアリスムを見ることが出来るように作品が展示されています。有名なダリの絵(三角形の時間)やマン・レイの写真、アルプの彫刻など、これほど多くのシュルレアリスムだけの作品を見ることができるのは痛快です。

しかしながら、対象がデュシャンの言うところの「網膜に映っている像」を超えようとしている作品群です。
すなわち、無意識の世界を描いていますので、鑑賞者の私たちにはなかなか理解すること出来ません。

人間の「目から見た風景」からの開放という視点はすばらしいのですが、そうであればあるほど、鑑賞する私たちの理解を超えたことになるので、見るほうの私も不思議な気持ちになってします。
右の絵はマグリットの「現実の感覚」というテーマの作品ですが、空中に浮遊しているのは、地球なのでしょうか?


4)その楽しみ4 ミュージアムカフェでくつろぐ

駅から大手前通りを通り、姫路城を散歩すると多少疲れます。まずは、ゆっくり休むことが必要です。

美術館の入り口に「ミュージアムカフェ」があります。独立した部屋ではありませんが、ちょっとしたコーナーの喫茶店です。

今回はアメリカンコーヒーを頼みました。
お店の人がサイホンで一杯一杯丁寧に作られていたのが非常に印象的でした。そのために、コーヒーは、程よい苦味でおいしくいただくことができました。

● アクセス JR姫路駅または山陽電車姫路駅から徒歩20分
   歩かれることをお勧めしますが、バスは山陽電車姫路駅下から
   土曜・日曜はループバスが便利です(100円)。

合掌 山さん

2007年10月21日日曜日

西脇岡之山美術館の楽しみ方

先日、昔の新聞の切り抜きを見ていたら、横尾忠則の日経新聞(2006年2月2日 夕刊)インタビュー記事に偶然出会いました。

その中で横尾は、
「今では流行、潮流に逆行しても怖くない。それまで踊らされた情報も、自分の本姓を見極めてからは興味の対象外です。
テーマや様式がばらばらでも納得できるようになった。ようやく自分の本姓に出会ったといえます。これから迷うことがない。」

これはすごい言葉だと思い、すぐに現在の横尾の絵を見てみたいという思いに駆られました。早速有給休暇をとって、ちょうど日本の真ん中(へそに位置している)にある横尾の出身地、西脇市の西脇岡之山美術館にいきました。

今回はこの美術館の楽しみを紹介します。

その1 建物を楽しむ

日本へそ公園駅を下車すると、目の前に昭和59年に磯崎新設計で建てられた美術館があります。

本館正面はギリシャ神殿を思わせる巨大な円柱が左右に4本あり、汽車をイメージしたと思われるアーチ型の屋根が続いています。
右には、ビラミッドの屋根を持つ瞑想室(メディテーションルーム)と右側にはアトリエがあります。

この美術館そのものが一つの芸術作品となっています。
入場する前に、美術館をゆっくり歩いて1周散歩し、この建物の雰囲気を感じることも気持ちがいいものですね。

入り口の階段を上がると、左手に受付があり、そこで入場券(310円)を購入して、展示室に入りことができます。

展示室は直列に3室あり、間に2つのガラスタイル床の部屋があります。
そのガラスタイルの部屋には、ブルーの鮮やかな空間が広がっています。
上の写真は展示室から入り口の方向へとったものです。

それぞれの展示室は、油彩の銭湯の作品群と最新作の温泉主義の温泉ポスターが展示されています。温泉主義のポスターは横尾の自由な世界があり、海底1万マイルのネモ船長とピカソの遭遇や三島由紀夫の自衛隊でのアジ演説等、時間と空間を越えた自由奔放な横尾ワールドを感じることが出来ます。

なお、温泉主義に関する横尾の紀行文は下記をクリックしてください。
横尾忠則の温泉主義



その2) 横尾忠則の絵を楽しむ

現在美術館では、「TDANORI YOKOO HOT BATHー未完の連鎖」というテーマで最新の油絵が展示されています。

ここではその中から、

「乙女湯(へちまと壷)2004年作 2273mm×1818mm」を紹介します。

なにやら5人の乙女が四角の風呂から出ようとまたは入ろうとしています。髪形を見ると日本髪あり、現代風あり、金髪ありで、どの時代かはわかりません。上部に扇風機があるので、現在かもしれませんが、制約にとらわれていません。

何でも描きたいようにするのが、今の横尾絵画なのでしょう。

この絵には、展示会に出品して凄さを見せてやろうとする心はまったくありません。
ただ、自分が描きたいものを楽しみながら黙々と描いているーそのように感じる作品です。
ぎらぎら感がない、今の横尾が私にはなんとなく親しみ感じます。


その3) 瞑想を楽しむ
本館の右側に瞑想室があります。
ドアを開いて中に入りましょう。

25㎡の小さな小さな部屋です。
中央に大きな黒い石があり、
周囲がガラスタイル、
屋根はビラミットの形をしています。



石の周りに座るか、または寝っころがって
ピラミッドパワーを感じませんか。

安らぎ音楽などをICレコーダーに入れて、
ここでその音楽を聴きながら、静かに瞑想できることは最高の楽しみですね。

この部屋を作らなければ、もっと大きな美術館を作れたそうなのですが、横尾のたっての希望で作られた部屋です。十分に味わいましょう。

そのためにはジーパン等のズボンでこられることを勧めます。
土日以外はほとんどの訪問者は訪れないとと思われますので、
1人でまたはペアでくつろぎの時を過ごすことができます。

その4) おいしい空気とゆったりした時間を楽しむ


ここには、お茶を飲むための喫茶店もレストランもまったくありません。自動販売機が1台あるだけです。

そのかわり、そこにあるのは、新鮮でおいしい空気とゆっくりとした時間です。

忙しい中で、毎日同じような生活リズムで過ごしている私たちにとっては、「おいしい空気とゆっくりした時間」を感じることは贅沢なのかもしれません。

この写真は、日本へそ公園駅のホームから撮った写真です。なお、レストランがありませんので、汽車へ行かれる方は、必ず、水と弁当を用意をされてお出かけください。

アクセス  JR加古川~JR西脇市駅~JR日本へそ公園駅
  
西脇市駅から日本へそ公園駅までは8分の時間ですが、待ち時間が長いので(2時間に1本程度)事前にネットで列車の時間を調べて行くことが大切です。

私は、今回大阪駅を12:30分に出発して、日本へそ公園駅に着いたのは、16時10分という長旅でした。
大阪から東京までの時間と同じくらいに到着にかかりましたので、くれぐれも時刻表には注意して出かけてください。

ちょうどJR加古川駅で、横尾の「Y字路」の絵をペイントしたラッピング列車に出会いました。最近のJRは粋なことをするものです。(左の写真)

合掌 山さん

2007年9月29日土曜日

神戸市立小磯記念美術館 美術館コンサートを楽しむ

今回は、神戸市立小磯記念美術館で9月29日開催された「ロビーコンサート」を紹介します。

小磯記念美術館内のショップ横のロビースペースで、神戸室内合奏団の4名によって演奏会が開かれました。

観客は150名程度の小さな演奏会ですが、演奏者の目に前で音楽を聞くことができ、迫力のある音を楽しむことができます。

曲目は、
1)サウンド・オブ・ミュージックから8曲メロディ
  私が古きこと数十年前の中学2年生の時にこの映画が日本で上映され、大変なブームになりました。

今年、NHKでこの映画のモデルとなったドラップ一家の「マリアが語るフォン・トラップ一家物語」 がありました。当時一番小さかった次女のマリアがアメリカへ無一文で移住し、家族で演奏会をおこない、最後はバーモント州のストウの山の中で自分たちでコテージ(トラップ・ファミリー・ロッジ)を建てる話でした。どんなに苦しくても前向きに生きてきたマリア(現在92歳)の明るい姿をみると、私も本当励まされました。

そのような思い出に浸りながら、「ドレミの歌、エーデルワイス、マリア、すべての山に上れ 等」を心の中で歌いながら、弦楽4重奏を聞くことができました。

2)秋の歌つむぎ~コノハムシ風~
  京都市立芸術大学の岡田加津子が秋の日本の童謡(赤とんぼを~夕焼けこやけ)12曲をうまくアレンジした曲です。小さいときにいつも歌っていた童謡を聞くと心から懐かしさに包まれます。

3)ベートヴェン 弦楽4重奏 ハ長調「ラズモフスキー第3番」
ロシアのオーストリー大使であり、音楽家のパトロンであったラズモフスキーにささげられた曲です。

全体で約1時間の演奏会でしたが、神戸室内合奏団の4名の息もぴったり合っており、元気のある見事な演奏でした。

コンサートを聞くための費用はかかりませんが、席は自由席となっていますので、30分前に席に着くと好きな場所で演奏を聞くことができます。

次回のコンサート予定は以下のとおりです。

2007年12月22日(土曜)「クリスマス・コンサート」14時開演
 曲目
 ・ F.J.ハイドン 弦楽4重奏曲 ト長調 OP.77-1
 ・ クリスマス曲集 
   J.ブラームス 弦楽4重奏曲 第一番 ハ単調 OP.51-1
コンサートは無料ですが、美術作品を鑑賞するための入館料金が必要です。

アクセス JR住吉(阪神魚崎)~六甲アイランド北口(六甲ライナー) 徒歩2分

合掌 山さん

2007年9月24日月曜日

神戸市立小磯記念美術館 藤島武二と小磯良平展 1枚の絵

神戸市立小磯記念美術館で現在、15周年記念記念特別展 ー洋画アカデミズムをになった師弟-藤島武二(1867年~1943年)と小磯良平(1903年~1988年)展(9月15日~11月18日)が開催されています。

小磯が芸大時代に師弟関係であった藤島との二人展で約130点が展示されています。

藤島の作品は、晩年の「日の出」をテーマとした風景画が良かったですね。大胆な表現と日本の景観との絶妙な調和はすばらしいものです。

しかしながら、今回の1枚の絵は、小磯の「練習場の踊り子達(1938年)」を選びました。

大きなキャンパス(191cm×180cm)に油彩で複数の人々(群像)が描かれています。

三角に配置された人物たち、
確かな表現力、
「白」と「黒」の対比が実に美しいですね。

まるでドガの踊り子を見ているようです。

戦前に制作されたのですが、まったく古さを感じません。

この作品は残念ながら現在、東京国立近代美術館所蔵となっています。神戸で見ることができるのはあと2ヶ月です。

合掌 山さん

神戸市立小磯記念美術館の楽しみ方

今日は、神戸市の六甲アイランドにある「神戸市立小磯記念美術館」の楽しみ方を紹介します。

この美術館は小磯良平の遺族から神戸市にアトリエを含む遺作2094点の寄贈により、1992年に開館されました。

建物は長方形の箱のように外側を取り囲むように建てられ、その中庭に神戸にあった小磯のアトリエがそのまま復元されています。

兵庫県立美術館の小磯記念部屋とこの美術館の展示をあわせると、神戸の画家小磯良平を十分に楽しめることができます。

では早速この美術館の楽しみを紹介します。

その1 水彩画を楽しむ

小磯の作品は油絵が有名ですし、それを鑑賞できることが楽しみではありますが、水彩画があることをこの美術館で知ることができました。

1956年から12年間、武田薬品工業の「武田薬報」の表紙絵として「薬用植物画」が制作されています。

正確な描写力と気品のある作品は小磯のまた違った才能を感じさせます。

左の絵は「かりん」を描いたものです。
一見、忠実に写実をしていますが、
現実ではありえない部分もあります。

どこが異なるか探してみるのも楽しいものですね。


その2 アトリエを楽しむ


この美術館の中庭にあるアトリエは、生前、小磯が制作をしていた神戸市東灘区のアトリエをそのまま、移築復元しています。

移築にさいしては、床の板すべて番号がつけられ、まったく同じ位置に移動され、まるで当時にタイムトリップしたように感じます。

中に入ると、アトリエをまじかに見ることができます。

朝のやわらかい太陽の光を取り入れるために作られた大窓、絵の具が重なって盛り上がっているイーゼル、好きな楽器のリュート、たくさんの美術関連の本、コーヒーミルなど 当時のままです。

このアトリエのどこにモデルがいて、またどこにある小道具が使われたか、想像しながら、美術館での作品鑑賞をすることも楽しみの一つです。

今回は、アトリエの説明を美術館の森上さんが説明してくださいました。ありがとうございます。
おかげさまで、小磯の制作状況がイメージできて楽しい時間を過ごすことができました。



その3 ハイビジョンで小磯を知る

美術館には「ハイビジョン・ギャラリー」室があります。
約45席の小さな映画館です。

そこでは、小磯の人がらや交友関係、芸術作品等がハイビジョンで紹介され、小磯を多角的に学ぶことができます。

現在の上映内容は左の写真のとおりです。

作品の鑑賞をしてからハイビジョンを見ることもよし、
ハイビジョンを見てから、作品を鑑賞することもよし、



小磯に理解がさらに深くなり、約2時間の楽しい時間を過ごせます。
ただし、中は暗く、冷房がきいていますので、そのままいい気持になって眠らないように注意しましょう!

その4 喫茶室 パサージュで休憩する

3つの展示室、アトリエ、ハイビジョン・ギャラリーを回ると疲れがどっときます。

美術館内に風月堂が経営する喫茶室パサージュありますので、お茶を飲んで休憩をしましょう。

店内は、二人テーブル3、4人テーブル3、14人テーブル1でこじんまりとした空間ですが、上品な雰囲気を持っています。

私はアイスティー(472円)をオーダーしましたが、風月堂ですからおなじみの「ゴーフル」がついてきます。

右手に美術関連の本がありましたので、「現代日本素描全集 9」をお茶を飲みながら見ました。この本は現在中古本でも見つけることができない貴重な本です。

その中にあるフィレンチェの「花の聖母教会」の素描は絶品です。

その5 ロビーコンサートや美術講座を楽しむ

 ●今月の9月29日(土)午後2時から神戸室内合奏団によコンサートが開催されます。
 コンサート料金は無料ですが、美術館の入館料金は800円が必要です
 (今回は開館15周年記念特別展ー藤島武二と小磯良平展の開催のために多少高めです)。

 まじかで、合奏団の音に出会えることは素敵なことですね。

 ●美術講座の開催 
 毎月1回、美術館の2Fで美術講座が開催されています。
 -10月27日(土) 藤島武二の芸術
 -11月17日(土) 富本憲吉 人と作品
 -12月15日(土) 雪舟作品の謎
 - 1月19日(土) 黒田清輝の作品と仕事
 - 2月16日(土) こんなにおもしろい江戸時代の絵画
 - 3月22日(土) アサヒビール大山崎山荘美術館の魅力

 2000円(6回)が必要です。また申込は10月6日まで、往復はがきで申込をします。

その6 六甲アイランドの野外彫刻を楽しむ
美術館を出たら、六甲アイランドを散歩しませんか。

超高層のビルに囲まれた場所に、すばらしい野外彫刻が34もあります。

六甲ライナーの下をまっすぐ海に向かってマリンパークまで歩くだけでも、船越保武の「渚」等7つのビーナスに出会うことができます。

この山さんの美術散歩でもこれらの彫像を取り上げる予定です。








● 美術館へのアクセス
   JR住吉駅(または阪神魚崎駅から「六甲ライナー」乗り換え、アイランド北口下車、
   徒歩2分

合掌 山さん

2007年9月22日土曜日

神戸 パブリック・スペース・アート 花と彫刻の道 散歩 II

今回は、神戸市庁舎周辺のビーナスたち出会うために前回に引き続き散歩します。

最初は、三宮の花時計前の交差点にある 一色邦彦(1935年~)の「潮風(ブロンズ 1986年設置」です。

細長い手足とあどけない顔もった「潮風」はさわやかな美しさですね。

ですが、体の頭、胴、足、手の方向がそれぞれ異なります。
なんだか妙に体に力が入ります。見ていると、自然首を曲げて見たくなる作品です。 微妙な姿勢でバランスをとりながら、三宮の交差点に潮風を運んできています。

「潮風」の先に、まもなく次のビーナスに出会うことができます。

私が大好きな日本の代表的な彫刻家 佐藤忠良(1912年~ )の「帽子・裸婦(ブロンズ1981年 設置)です。

神戸にぴったりの彫像ですね。

モダンで凛とした神戸の女性を思い浮かべる素敵なビーナスです。

物憂げに下を見ていますが、何を思っているのでしょうか。神戸の街の素敵な思い出に浸っているのかもしれません。


次に、出会うのが朝倉響子(1925年~ )の「WOMAN(ブロンズ 1981年 設置)です。

なにともいいようがない、怖さを感じます。
その生々しさに、生命感を感じます。

女性の彫刻家ということで、男性の作品とは異なる雰囲気がありますね。

だらりと前にのびた両腕。
傾いた体と頭。
エキゾチックな表情。
荒々しい質感。

思わず「ドキッ!」とさせられるビーナスです。




今度は、市庁舎前の「東遊園地」にあるビーナスに出会いましょう。

最初に出会うのが、船越保武(ふなこしやすたけ 1912年~2002年) シオン(ブロンズ 1981年設置)です。

最初に船越の作品に出会ったのは彼の故郷盛岡の岩手県立美術館での「船越保武のコレクション」でした。
その作品からにじみ出る「聖なるオーラ」の衝撃は今でも忘れることができません。

この「シオン(神に約束された地)」にも同じオーラがあります。表情は、船越がイタリアのアッシジで雨中に出会ったといわれる「幻の聖女クララ」の顔そのものです。

神戸にこのような精神性の高い船越の作品が設置されていることは、神戸の誇りです。

次は、久保浩(くぼ こう 1932年~ )の「海の栄え(ブロンズ 1981年設置」です。

エネルギッシュで、右足を前にして、伸びやかに両手を左右に大きく広げた動きは、まさしく海の賛歌を体全体で表現しています。

見ていて、こちらもその若々しい力をもらえるようなすがすがしい気持ちになりますね。

「花と彫刻の道」の一番海側においてあります。

ここまで散歩をすると多少疲れがでてきます。
この「海の栄え」を見て、元気をだしましょう。





最後のビーナスは木内克(1892年~1977年)の「エーゲ海に捧ぐ(ブロンズ 1971年 設置」です。

ウィッツィ美術館にあるボッティチェリの「ビーナスの誕生」を思い出させる作品ですね。

高さが230cmあり、まさしく存在感のある神戸のビーナスそのものです。

同様なものが姫路市立美術館他にも展示されいます。






いままで「花と彫刻の道」にある多くの個性的なビーナスに会ってきましたが、この熱い中ではぐ~と疲れがでてきます。

神戸市庁舎の24Fに喫茶店とレストランがありますので、行ってみましょう。

今回は喫茶店「カフェ コンフォート」で休憩をとりました。
写真にあるように24Fからの神戸の景観はいいですよ。

アイス紅茶(380円)を飲みながらくつろいでみませんか。

なお、この庁舎の1F階には、ロダンの「青銅時代」、マイヨールの「着衣のフローラ」、佐藤忠良、船越保武の作品が展示されています。

神戸の三宮は今まで散歩してきたように、すばらしいコレクションが野外に展示されています。

ぜひ、一度ゆっくり散歩して、美を味わい、感動し、驚かされ、癒されませんか。
そういう時が、一番贅沢ではないでしょうか。

合掌 山さん

2007年9月3日月曜日

神戸 パブリック・スペース・アート 花と彫刻の道 散歩 I

今回は、神戸 三宮のフラワーロードに沿って「花と彫刻の道(この道には、終点の東遊園地も含めると37の彫像) 」を、散歩します。
きっと多くの個性豊かな神戸のビーナスの出会うことができることでしょう。

地下鉄に乗るより、ちょっと散歩をしながら多くの「ビーナス」の出会う そのような心を豊かにする時を持ちたいものです。

まず、神戸で新幹線を降りて三宮まで歩く途中で、そのご褒美として最初に出会うことができる彫像が岩野勇三作(1931~1987)「なほ」(ブロンズ 1987年設置)です。

「なお」の頭は右側を向き、体は正面、両手でバランスをとっている姿は確かな量感と構成の美しさを感じます。

高さは128cmにすぎませんが、大きさと存在感を感じる彫像です。


次に、「なお」から約100m先(加納町3丁目交差点)に、大桐國光作 「少女」(ブロンズ 1988年設置)に出会うことができます。

110cmの小さな彫像です。
本当にかわいい 可憐な少女です。

つい、つい私は「少女」の頭をなでてしまいました。

彫像のいいところは触ることができることあります。目で見ることも大切ですが、触って感じることも、芸術の大切な鑑賞方法ではないでしょうか。



さて、次に紹介するのは、神戸の彫刻家 津野充聡作(1952年~)「WIND」(ブロンズ 1986年設置)です。

大きな帽子をかぶり、堂々としたモダンなビーナスですね。
このビーナスを見ると、神戸を感じます。

左手は風の方向を指し示していつのでしょうか。
それとも未来を指し示しているのでしょうか。

思わず、私も指の先を見てしまいました。

残念なことに、そこはゴミ収集の場所となっており、ちょっぴり残念でした。芸術作品と隣あわせのゴミの山ー私たちの現在の姿を象徴しているのでしょうか?



次は、掛井五郎(1930年~ )作「長い午後」(ブロンズ1982年設置)です。

このビーナスは、珍しく座っています。
そうして、おもむろに上を見上げています。

あどけない瞳に何をみているのでしょうか?

純粋に一点を見つめ続けているその姿は美しいものがあります。

そんな時間が私たちの人生にも必要だと思う気持にさせる彫像です。
「あなたもそんなに人生を急がないで、一度座ってゆっくりと空をみませんか?」 と掛井は私たちに問いを発しています。



次は、三宮の交差点にある彫像を紹介します。

神戸をこよなく愛したアモーレの彫刻家 新谷琇紀(しんたにゆうき 1937年~2006年)の金色に輝く「ALBA(アルバ)」(ブロンズ 1985年設置)です。

三宮の中心にあるこのALBE(夜明け、はじまり)は確かに不自然な姿勢ではありますが、私は生命の鼓動を感じます。

三宮の中心地にビーナスが存在し、絶えずエネルギーを発し続けているように思えます。
一度、このビーナスに会って、そのエネルギーを感じませんか。

なお、このALBAは自由に回転させることができます。直接彫像に触れて回転させて見ましょう。


次は、三宮の商店街の入り口にある桜井祐一作(1914年~1981年)の「レダ」(ブロンズ1982年 設置)です。

桜井は病との闘いの中から凄い作品を生み出した彫刻家です。

その代表作「レダ」が三宮にあります。

レダはギリシャ神話の人物です。
スパルタ王ティンダリオスの妻レダを誘惑するために白鳥に変身したゼウスを、鷹から守るために自分の腕に隠しました。その後、密通により、レダはゼウスの子-トロイのヘレナを生みます。
ゼウスはヘレナをわが子として育て、その誕生を記して白鳥座を作ります。

この神話のレダの複雑な心の動きを端的に表現したのがこのレダ像です。

なんて、苦しくて悲しい表情なのでしょうか。
桜井は自分の運命をそのままこの彫像に託したのかも知れません。

私は、病と壮絶な戦いの中で、凄い彫像を創造したいった桜井の生き方をこのレダをとうして感じます。



今回紹介する最後の作品は、三宮の地下鉄海岸線入り口にある中村晋也 (1926年~ )MISERERE(ミゼレーレ 哀れみたまえ) 1995年設置です。

私は、中村晋也このとを「祈り」の人とよんでいます。

その彫像から沸き上がる精神的エネルギーは、ひたむきに生きぬく祈りの姿です。

この彫像は1995年1月17日阪神・淡路大地震の鎮魂を祈念して設置されました。

私は通勤途中で毎朝、この彫像を見ていますが、イエス・キリスト像を見ているような気がしてなりません。
思わず手を合わせたくなるような作品です。

人間の内面に訴える力をもった彫像が中村の彫像のすばらしさです。


ぜひ、皆さんも神戸 花と彫刻の道を散歩して、豊かな時を過ごしませんか。
次回もこの続きを、花と彫刻の道 散歩IIで書かせてもらいます。

合掌 山さん

2007年9月1日土曜日

1冊の本 森村泰昌著 「美しい」ってなんだろう?

今回は美術家の森村泰昌の『美しい」ってなんだろう? 美術のすすめ』という本を散歩したいと思います。

この本を書かれた目的は、できるだけたくさんの人が「美術っておもしろいなあ」と思い、「美術館にいっぺん行ってみようと強く感じてほしい」という著者の思いから書かれています。

本の構成は、学校の授業のように1時間目~10時間目の10章に構成されています。まるで、森村美術教室で美術の講義を受けている感じです。
内容は、本当にわかりやすし、美を冒険していく上での必読書です。
さらに、所々に若い学生からの質問に真摯に回答されているQ&Aもあり、そこには人生の至玉の言霊がちりばめてあります。


1時間目の授業は、「私は美術家です」というテーマで、「カワイイやカッコイイ」をはじめとして、途方もない大きさをもっている美しさを探しに行くための冒険の場所、それが美術館ということがかかれています。

2時間目は「モリムラ美術館」への招待です。上図にある「肖像・ゴッホ 1985年 カラー写真」を作る中で自分の道=第4の道(見る・作る・知る→なる)を見つけられたことが書いてあります。

3時間目は「ふしぎ美術館」です。美術鑑賞では、マニュアルに惑わされることなく、「自分の頭の中をまっしろ」にしてから美術作品と出会い、その不思議を味わうことを勧められています。
具体的には、ドラクロアの「民衆を導く自由の女神」を例に出して、戦争の中で「はだか」の人が描かれている不思議を「絵のまえでは腕組みをせず、ふしぎだ?→笑える?→でも笑いをとっているわけではなさそうだ?だったら何故そうなっているんだろう」と空想する中で、絵の面白さを感じることー気持ちのドキドキ感ーを提案されています。

私は、現代美術の出会いでー例えばマルセル・デュアシャンは時として「笑ちゃう」ことはあります。しかし、それから先へはすすむことができなくなることがよくあります。その作家や現代美術に関しての知識がある程度あったら、何故にたいする空想がさらに広がるように思っています。

4時間目は「ものまね美術館」です。無から有は生まれません。すばらしいという感動の対象をみつけたら、それをまねする。そうして、その世界に何かを付け加えたり、違う角度から眺めてみる。そうして、一歩一歩アレンジを付け加える。すべての始まりはそこから生まれる と指摘されています。
世阿弥の「風姿花伝」に「修(手本を真似る)・破(独自の工夫を付け加える)・離(手本に縛られないで独自なものにする)」と一人前の能役者(真の花)になる成長の段階が書かれていますが、「ものまね美術館」ではそれと同じことを指摘されていると思います。

5時間目は芸術と芸能美術館です。芸術の目的は「深く行きつくこと」、一方、芸能は「広くいきわたらせること」。両者は文化の両輪。

6時間目は「しあわせVSふしあわせ」美術館です。芸術作品を見る視点を、「しあわせとふしあわえ」という視点で見ると「美の世界」がさらに広がります。
具体的に印象派の作品(しあわせの作品ー私は光の作品と呼んでいます)と後期のゴヤ作品のムンクふしあわせの作品ー私は影の作品)とを比較し、両者にはそれぞれの美があると指摘されています。さらに、ゴッホの作品の中にある外面の影と内面の光の両面をもっている作品に焦点をあてて、美のいろいろなバリエーションを知ることで、美の世界を深堀することを提案されています。
美しさは光の中にも見出すことができますが、影の中にも私たちは美しさを見出すことができます。美とはなんと広い世界なのでしょうか。

7時間目は「ほねぐみ美術館」です。この章で、抽象画のたいする見方が大きくなりました。「なるほど!このように見ると良くわかる」と私も活眼しました。
モンドリアンの「青と黄色のコンポジション」と写真家ブレッソンの「トリエステ」を例に出して、表側(きれいでわかる世界)と内側(すぐには見えないものー骨組み(本質)の世界)の2つの世界を表現している美の世界があることをここでは説明しています。

これから芸術作品を見るときは、「心のレントゲン」で裏にある骨組みを見てみませんか!このことで抽象画の美に対する冒険はさらに広がることと思います。

8時間目は「大きさ美術館」です。現代社会の特徴である「大きい、多い、おしゃべり(主張する)」ことが重要だという価値観から、フェルメールの作品のように「小さく、少ない、おとなしい」ということも同じく価値があると述べられています。このような見方をしていくと、美しいということはさらに大きく広がります。

9時間目「地球美術史美術館」です。この章では、メキシコの女流画家「フリーダ・カーロ」の紹介があり、私は感動してしまいました。
彼女の映画が日本で公開(2003年)されていたので、ぼんやりとは知っていたのですが、すごい絵を見てしまいました。
フリーダは6歳で小児麻痺になり、18歳でおなかに鉄の棒が刺さるという交通事故にあい、それでも絵を描き続け、47歳でこの世を去った人です。
その彼女の「折れた支柱」という作品は、全身に釘がささり、体の中心を金属でささえ、それでも、凛として美しくたっているフリーダーの自画像です。人間の美しい凄さを垣間見る作品です。
世界は広いことを実感させられた章です。

最後の10時間目は「いつでもどこでも美術館」です。美術館は、いろいろな種類の「美」が実る森だと考え、どれだけたくさんの種類の「美」という感動のどんぐりを拾って持ち帰るころができるか、そんな気持ちをもって美術館に足を運びましょう と提案。

そうして、
「きれいでなくても美しい、ちっぱけでも無限の世界がある、みぢかなところに、すばらしい感動がある」
美はどこでも見つけることができる と最後に喝破されています。


この本の中に素敵な言霊がありましたので紹介します。

心の美人
「なにかを美しいと感動できる心をもった人は美しいと。
美しい心を持った人が美しいんじゃなくて
美しいと思う心を持った人が美しいんだ。」


合掌 山さん

2007年8月22日水曜日

神戸市立博物館 1枚の絵

今回の1枚の絵は、神戸市立博物館 特別展での葛飾北斎の富嶽三十六景の中の「神奈川沖浪裏(1829年頃)」を紹介します。(クリックすると大きく表示)


おなじみの絵ですね。


悪魔の手のような大浪(波)が2艘の船を襲っています。その波間を滑っていく船。

現在人の私には、大浪をサーフィンをしているように小船が見えるのですが・・・・。

前面に動である大浪と船を配置し、
大浪が落ちる場所に静である富士山を配置しています。

しかも、目の付け所が、題名にあるように「浪裏」にあるのです。
北斎のイマジネーションは実に見事です。

波の色は、波頭の白と3色の青。
薄いブルーの藍、2色の濃いブルーの「プルシアンブルー」。

見事な構図と色使いですね。
さすがに画狂人北斎(70歳頃の作品)です。

この絵は9月2日まで、神戸市立博物館の「特別展ー西洋の青 プルシアンブルーをめぐって」で見ることができます。入場料金は600円です。

合掌 山さん

2007年8月21日火曜日

神戸市立博物館の楽しみ方

今回は神戸市の京町筋にある「神戸市立博物館」の楽しみ方を紹介します。 三宮駅から京町筋を海へ向かって10分ほど歩くと、ギリシャ建築風の建物が右側に見えてきます。

入り口には、右の写真のように両手を広げて「ロダンのジャン・ド・フィエンヌ」が迎えてくれます。

この博物館は神戸市立南蛮美術館と考古館とが統合されて、1982年に開館しました。

博物館と名前がつけられているように、常設展では古代から現代まで、神戸市から出土された国宝絵画銅鐸をはじめとして多くの歴史を伝える展示物があります。歴史を学ぶにも最適なところです。

震災後、復興に1年かかりましたが、それ以降は古今東西の名画が神戸で見ることができるようになりました。具体的には、2004年は「フェルメールの画家のアトリエ」、昨年は「ダビットのナポレオン」が、そうして今年は「マネのモリゾ」に出会うことができました。

最近の私にとっては、博物館という名前になっていますが、「神戸の美術館」というイメージですね。

では、この博物館での楽しみ方を紹介します。

その1 南蛮美術を見る
南蛮美術の収集・研究家であった池永孟(いけながはじめ)のコレクションー狩野内膳の南蛮屏風等4500点が神戸市へ寄贈され、現在この博物館に展示されています。

昔、教科書にのっていたあの絵、「聖フランシスコ・ザビエル像」がこの博物館にはあります。
懐かしい気持ちになりました。

そうかここにこの絵はあったんだ!
絵を見るとなにやら下に文字があいてあります。

「さんふらぬしすこさべりうすさからめんと」と万葉仮名で書いてあるとのことですが、よくわかりません。
それよりも「十字架のキリスト」を支え、
神への燃える愛の象徴である「赤の心臓」。
そうして、
ザビエルの口からでている言霊「満ちたれり、主よ 満ちたれり」が私には強く印象に残りました。


その2 特別展を観るー西洋の青 プルシアン・ブルー紺青をめぐって

絵の具の色「青」にフォーカスを当て、日本人の画家が使っていた「露草や藍の青ー日本の青」から「プルシアンブルー 西洋の紺青(1704年 ベルリンで合成顔料として発見)」が使われるようになった変遷を時系列に見ることができる展示会です。

このプルシアンブルーが葛飾北斎の「富嶽三十六景」に使用されて以来、日本の青になっていく過程が良くわかります。

浮世絵の平面的な表現に、空の色としてプルシアンブルーでグラデーションをつけ奥行きを表現できるようになったことは画期的なことでした。


富嶽三十六景の「凱風快晴」の空の色はそのグラデーションをはっきりと示しています。

同じ青でも、材料の違いで色々な青があることが良くわかる展示会です。
円山応挙の「富士・美穂の松原図」や葛飾北斎や「富嶽三十六景」をはじめとして、147点が展示されています。


その3 ティーラウンジ エトワールでくつろぐ

2階の左奥に「エトワール」があります。

お奨めは、ティーセット(チョコレートケーキ)です。
砂時計がついていていますので、4分経過したらウエッジウッドのカップにたっぷりとティーを注ぎましょう。

ストレートで飲むのもよし、
ミルクティーにするのもよし、
たっぷりと3杯は楽しむことができます。

ヴィバルディの音楽を聴きながら、ティーとチョコレートケーキいいですね。
私にとってはたいへん贅沢な時を過ごすことができました。

その4 学習室で学ぶ

エトワールの手前にこじんまりとした「 図書館」があります。
神戸や東西交流や南蛮美術に関する本等約5400冊があります。
じっくり本を読むにはいい場所です。



2階の奥に「世界地図のステンドグラス」がありました。




美しい青でしたので、ここに写真で紹介します。

●アクセス
三宮駅(JR・阪急・阪神)ともに海に向かって京町筋を徒歩約10分。

合掌 山さん