2007年7月22日日曜日

国立国際美術館 1枚の絵

今回の1枚の絵は、国立国際美術館のマルセル・デュシャンによる「L.H.O.O.Q.」(1919/1964年)です。


人類最高の価値ある芸術作品のひとつであるモナリザのコピーにモナリザに髭を描いて、「まあ、なんと失礼な!」とあなたは憤慨しますか?

それとも、思わず笑いますか?
それとも、「髭をつけると、ジョコンダ婦人も男性に見えるなあ」 と、面白さを感じますか?
それとも、「モナリザに髭をつけるなんて、なんてすごいやつ!」 と感心しますか?

この作品を見ているうちに、自分に向かって私は多くの質問を発するようになってしました。

・ 作品の作り手は、人間が今まで築いてきたものにただ乗りし、目に写るものを描いているだけではないのか?それは芸術的価値あるものだろうか。

・鑑賞する私は、みんなが芸術作品というから、有名だからということでその作品を価値あるものと思ってはしないだろうか。

・作品の芸術的価値は、作り手が決めるのか、それとも鑑賞者の私が決めるのか。画商が決める貨幣的価値で決まるのだろうか。それとも、長い時間なのだろうか。

・作品を作ることに価値があるのか、あるいは、私が作品の中にある芸術的価値を発見することに価値があるのだろうか。

・鑑賞者の私が、その作品を目の前において、あらゆる束縛を超えて、純粋な心で対峙することができるのだろうか?

・作り手は、自分が好むものを作ることに芸術的価値があるのだろうか。それとも、超絶技法で鑑賞者が好むものをつくることに芸術的価値があるのだろうか。

・創造性とはなんだろうか。コピーに髭をつけるデュシャンの行為に芸術的価値があるのだろうか。

・芸術作品は、キャンバス、形、色、材料、対象、空間と時間に限定されるのだろうか。

・限定されることに価値があるのだろうか。 それともそれを打ち破ることに価値があるのだろうか。

・芸術作品の完成は、何を持って完成というのだろうか。

・芸術作品とはそもそも行為(運動)の残骸ではないのか。重要なことは、作る行為やプロセスに価値があるのではないだろうか。その行為を鑑賞者の私はどうして知ることができるのだろうか。

・そもそも人間が作り出したものは、自然界が作り出したもの以上の芸術価値をもっているのだろうか。

私にとってデュシャンは、「芸術にたいする根源的な問いを投げかけつづける人」です。
この絵を見ていると、デュシャンの言葉が聞こえてきませんか。

「君にとって芸術とはなんだね?」

合掌 山さん

0 件のコメント: