2007年8月6日月曜日

アルフォンス・ミュシャ館 1枚の絵

<スラブ叙事詩>展のポスター 1928年 カラーリトグラフ (絵をクリックすると拡大します)

アールヌーヴォーの主役から降りたムハ(ミュシャ)は、芸術を通じてスラブ民族の団結に貢献するという生きる原点に立ち返り、本当に心の底から描きたいもの-魂の絵 すなわちスラブ民族の油彩による歴史画の制作に取り掛かります。

約18年の年月をかけて、1928年、「スラブ叙事詩―絵で見るスラブの歴史 超大作20作品」が完成します。

これらの20作品は、残念ながら、現在日本にはなく、チェコのモラフスキー・クルムロフ城にあります。

しかしながら、この「アルフォンス・ミュシャ館」には、「スラブ叙事詩」の出発点となった「ハーモニー」とこの展示会のポスターがあります。
特に、「ハーモニー」を見ると、ドイツ劇場で受け取りを拒否されましたが、スラブ民族の調和を願うムハの心が本当によくわかる作品です。

そうして、今回の1枚の絵は「スラブ叙事詩20作品」の展示会のポスターを紹介します。

天使の楽器ハープを奏でているのは、娘の「ヤロスラヴァ」です。

ムハはどのような思いをハープの音に託したのでしょうか?
おそらくそれはスラブ民族の調和と発展の歌なのでしょう。

ヤロスラヴァの後ろには、過去・現在・未来の顔をもつ希望の神となった
青い「スヴャトヴィートSventovit」が力強く、娘の「ヤロスラヴァ」とスラブ民族を見守っています。
右手に酒を満たした牡牛の角を持っていますので、
「スラブ叙事詩」の完成に、祝杯を挙げているのかもしれません。

このポスターはアールヌーヴォー時代の極端にデザインされた形から、
素朴で正確なデッサンに裏づけされたムハの確かな技術がここにはあります。

アールヌーヴォーのミュシャしか知らなかった私にとって、
歴史の大波に流されながらも、
自分の信じる芸術を描き続けた一人の魂にいつでも出会える場所
それが、この館です。


合掌 山さん

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