
神戸のポートアイランドでマルタ・パンの作品に出会ってから、もっと彼女の作品を見たいと調べていたら、スキュルチュール江坂(瀟洒な建物の意)という彫刻美術館に4点の作品があることがわかりました。今回は、この彫刻美術館とその彫刻庭園の楽しみ方を紹介します。

歴史的には、最初(1990年)にマルタ・パンの作品を中心とした「リーニュ・ブランシュの庭」が出来上がり、その後1997年に彫刻美術館「スキュルチュール江坂」がつくられたとのことです。
彫刻美術館は、世界的な彫刻家の最高の作品が10点(野外のマルタ・パンを含める)展示されています。それぞれの作品はすべて彫刻家の代表作ばかりです。それらの作品を楽しむには、スペース的には狭い空間ですが、作品の質を考えると最高の場所です。じっくりと1人で味わう空間と時間がここには用意されています。山さんお薦めのアート空間です。
彫刻美術館には、日本の彫刻家に大きな影響を与えたシャルル・デスピオのデッサン画とアフリカ彫刻も展示されています。また彫刻庭園はマルタ・パンの作品が3点、内田晴之の作品が1点展示してあります。緑の芝生の中にある作品は生き生きとその存在を示しています。
楽しみ方 その1-ニュ・ブランシュの庭を楽しむ

8mもあるモニュメント(左の写真)、斜めに設置されている迷路、風に吹かれて池を浮遊している浮かぶ彫刻。そして、3つの作品が白いラインで結ばれています。 マルタ・パンの3つの作品を同時に見ることができる稀有な場所です。
2001年に来日の時にマルタ・パンは次のように語っています。「私の作品にとって何よりも重要なのは、その場所にとけ込むことです。私の作品はどれも、空間、場所、周囲のものとの関係において成り立っていると思います。というのも、私は完全に自立したオブジェを創りたいのではなく、建築、あるいは風景の延長であるようなものを創りたいからです。そしてこの延長というのは、生きた世界と死んだ世界との媒介となるものなのです。 こうした場所に出入りする人々には、このような媒介、つまり安心感を与えてくれるものが必要だと、私は思うのです。」 このマルタの理念が表現された場所が「ニュ・ブランシュの庭」です。
楽しみ方その2-最高級の彫刻作品を楽しむ
受付で無料の作品説明のためのICレコーダーを渡されます。それを聞きながら作品を見ていくと更に理解が深まります。ただし、他の方の迷惑を考えて事前にイヤホーンを持っていかれることをお薦めします。 私が特に印象をもった作品は下記の3作品です。
1)ブルーデルの「ペネローブ」(1909年製作) 隣の展示はザッキンとロダンでしたが、この「ペネローブ」が一番光り輝いていました。トロヤ戦争で消息を絶った夫を待つ妻ペネロープの姿をモデルとしていますが、その表現は、大きな腕と直線的な下半身の線、小さな顔で何かを思いつめている表情。凛とした存在感を示しています。作品が放つ空気がなんともいえません。
2)ロッソの「悩める子」(1893年)」
少女の頭部だけの作品です。斜めに頭を傾け、目を閉じている表情は何かに悩んでいるように見えます。石膏で作られたものを、蝋(ロウ)で覆っていますので、その不透明な表情が生々しさを増幅し、心の内面にある苦悩を実によく表現しています。
3)マンズーの「枢機卿(1986年製作)」
枢機卿とはカトリックの教皇に次ぐ高位聖職者の称号です。暗闇に光るこの枢機卿は、円錐状に単純化された表現も関わらず、威厳と神秘性をかもちだしています。
楽しみ方その3- お茶を飲みながらマルタ・パンを楽しむ
受付の前に喫茶コーナーがあります。 そこにはジョージ・ナカシマのデザインした「ナカシマ・ラウンジ

コーヒーを味わいながら、ガラスごしにマルタ・パンの「割れた球体」を見ましょう。 マルタ・パンは次のように話しています。 「芸術作品の存在はボリュームとかフォルム、色彩、素材によって定義されるものではありません。そうではなくて、芸術が寄与できるのはエネルギーを与えることです。芸術は周囲の空間の力に抑揚をつけ、かつ強めるのです。場所と、そこを通り抜ける人々の行動に働きかけるこうした能力こそが、私たち彫刻家の力であり、存在理由であり、そして責務でもあります。(高松宮殿下記念世界文化賞受賞の記念講演)」 真っ白なマルタの作品からは清らな安らぎのエネルギーが出ています。そのエネルギーを感じながら、ここでは十分にくつろぐことができます。
楽しみ方その4-アフリカ彫刻を楽しむ
アフリカの民族彫刻が展示されています。仮面、人形、ベット等があります。ピカソをはじめとして多くの芸術家のインスピレーションを与えたアフリカの彫刻は人間の根源的な生命力に溢れていました。
アクセス
地下鉄御堂筋線にのり、江坂駅で下車して徒歩10分程度です。
送迎バスが出ています。江坂駅の4番出口より出て高架歩道橋を歩って左に下るとすぐ(赤い郵便ポスト前に停車します)に送迎バス(無料時間5分)がありますのでそれに乗ると便利です。アメニティ江坂のテニスセンター前(最初の停留所)で下車します。その前に、美術館と庭園があります。なお、送迎バスの時間はここをクリックしてください
合掌 山さん
1 件のコメント:
今晩は、ハンドルネーム、ジェミニ、と申します。友人から教えてもらって「山さんの美術散歩」にお邪魔しました。
気分転換にいろいろなサイトやブログページを見ていますが、こういうのは初めてです。
兵庫県在住ですので、これから外出したりピクニックにでかけたりする範囲が広がりそうです。
今度はバックナンバーもじっくりと拝見したいと思います。
これからも時折お邪魔したいと思います。新作が楽しみです!
ジェミニでした。
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