2008年7月14日月曜日

2つのモディリアーニ展

現在姫路と大阪でモディリアーニ(1884~1920)展が開催されています。

 一つは姫路市立美術館の「アメデオ・モディリアーニ展」(7月8日~8月3日)、もう一つは国立国際美術館の「モディリアーニ展」(7月1日~9月15日)です。
 
2つの美術館が、世界中からモディリアーニの作品を借り展示しています。姫路市立美術館は約50作品、国立国際美術館は150作品と全部で200作品を現在関西で見ることができます。

最初に感じたのは、美術雑誌で見るモディリアーニの作品と本物とでは伝わってくるものが全く違うということです。そのギャップ(表現の深さと広がり)が大変大きいのです。 首の長い変な肖像画と思っていたのですが、実物は全く異なります。今回、彼の作品ほど本物を見ることの大切さを感じたことはありません。
 
 では、2つの展示会の楽しみ方を紹介します。

1)モディリアーニの画業の軌跡を時系列で楽しむ
  両美術館ともにモディリアーニの作品を時系列で展示していますので、成長の軌跡を見ることができます。
 国立国際美術館では、モジリアーニの軌跡を 4つに分けています。

 1)プリミディヴィスム(アフリカや東南アジアの芸術)の発見(1906年~  )
  
1906年イタリアからパリへやってきて、いろいろな画風の絵を描いた時期です。表現主義らしき作品、エゴンシーレ風の作品と多くの先人達の影響を受けた作品があります。モディリアーニらしさはまだありませんが、その中に彼の芸術の才能を見出すことができます。
 
右の絵は「嘆きの裸婦(1908年)」という作品です。作品の内面から発せられる人間の不安や苦しみを感じます。



2)実験的段階へ:カリアティッド(古代神殿を支える女性像)の人物像ー前衛画家への道(1913年~1915年)
   
 理想的な石像を製作するために、カリアティッドを描いた時代です。
  モディリアーニは、ロダンが製作に使っている粘土をもとにした彫刻作品ではなく、ミケランジェロのように直接大理石をのみで彫る彫刻作品を作ることを目指していました。 そのための習作がカリアティッドです。

 右の作品のカリアティッドは1913年に製作された作品で、表情はありませんが、原始的な力強さや強烈な存在感があります。
 
 3)過渡期の時代:カリアティッドからの変遷ー不特定の人物像から実際に人物の肖像画へ
   健康上の理由から彫刻を断念して(1914年~)、色々な表現方法を模索しながら、絵を描くことに専念しはじめた時代です。

 
右の絵は「クララ(1915年)」という作品です。長い首、長い鼻、片方の目が黒で塗りつぶされている目とモディリアーニの特徴が表現されていますが、顔の形全体がが立体的に描かれていてキュビズム的に表現しています。


 4)仮面からトーテム風の肖像画へ:プリミティヴな人物像と古典的肖像画との統合

 現在に私達のイメージの中にあるモディリアーニらしい作品が製作された時期(1915年~ 1920年)です。

左図の「女性の肖像(通称:マリー・ローラサン 1917年作)という作品です。
茶色の髪、細長い鼻と首、凛とした目の表現、引きしまった口で彼女(ローラサン)の内面性を表現しています。才能溢れ、輝くローラサンの表現が実に見事です。

画面の奥から、ローラサンのコトバが聞こえてきそうです。
「私は才能溢れる女性よ!」と。


2)好きな作品をじっくり鑑賞する

全作品をざっと見たら、次に気になる作品や好きになった作品をじっくり見てみましょう。

姫路市立美術館では、左図の「赤毛の少年(1919年作)」が好きになりました。

朴訥とした少年です。

不要なものをすべて削ぎ、単純化しています。
しかしながら、じんわりと少年の存在感を味わえる作品です。

ローラサンのように光り輝いてはいません。
しかしながら、かみ締めるほどじんわりと味が出てくる、
私はそういう作品が好きです。

モディリアーニの少年に対する優しさと内に秘めた純粋性を感じます。

 こんなにもたくさんのモディリアーニの作品に出会えることは、めったにあるものではありません。
特に本物は作品から出てくる独特の雰囲気があります。
そのことで、私達は多くの感動を得ることができるものと思います。

 合掌 山さん

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