2008年9月23日火曜日

伊丹市立美術館とみやのまえ文化郷

兵庫県伊丹市の「みやのまえ文化郷」のなかにある「伊丹市立美術館」を今回は訪問しました。

 この伊丹市立美術館は1987年11月に柿衞文庫の建物が増築されて、その文庫との共同利用ということで開館しています。ですから、柿衛文庫と美術館の入口は同じですし、両方を楽しむことができます。 
 
美術館は、オノレ・ドーミエ(1808~1879)・コレクションでは世界有数の美術館です。1,800点の諷刺版画、49点の彫刻、4点の油彩があります。ドーミエの諷刺とユーモアがある作品を見ていると、心がほっとして笑いが自然にこみ上げてきます。 
 
また、柿衛文庫には俳書を中心とする書籍約3500点、軸物や短冊など真蹟類約6500点があり、日本三大俳諧コレクションとなっています。松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶、正岡子規、夏目漱石等の作品があります。 更に、枯山水の庭園、清酒醸造で栄えた江戸期の伊丹の象徴である旧岡田家住宅があり、江戸時代にタイムスリップすることができます。 
 
実にここは文化の香り豊かなところですね。その感覚がにじみ出ています。では、山さんの4つの楽しみ方を紹介します。

1)彫刻作品を楽しむ

 阪急伊丹駅から美術館へ行く途中に、河合隆三の少女と犬の石の作品がさりげなく置いてあります。ぜひ、見てみましょう。本当に品のある愛らしい作品です。 

 館内外には多くの彫刻作品が展示されています。入口正面には、ブルーデルの巨大な「ドーミエ像(頭部)1927年製作」があります。その横には、その昔、頼山陽がその柿のおいしさで感動した柿の木でつくった大久保英治の「つどい(1994年製作)」があります。 

 今回私が一番感動した彫刻作品は、柳原義達の代表作「犬の唄(1950年製作)」です。ポートアイランドにある作品と姿勢が異なりますが、まじかでみると凄い作品です。ロダンの作品を思い浮かべるような表情、右手首を犬のように曲げ、膝をちょっとだけ曲げている姿は人間の感情表現を見事に表現し、内面の生命エネルギーを感じます。 

 更に、堀内正和の「球もまた空にかえってゆく(1967年製作)」、今村輝久の「’90年封じられた時限2(1990年製作)、ブルーデルの「剣をもつ兵士(1898年製作)が展示され、庭にはブルーデルの「牧神と山羊(1908-1909年製作)」、江口 週の「遺された時 蔵の組舟(1992年製作)」があります。 これらの彫刻をまじかでみることだけでも、ドーミエ作品とともに入場料200円は驚きの価格です。安い!

2)ドーミエ作品を楽しむ

19世紀のフランスは資本主義の勃興と政治的な大変化をともない激動の時代でした。その時代、オノレ・ドーミエ(1808~1879)は鋭いまなざしと類まれなデッサン力で、世相や権威者(国王や政治家)などを風刺した絵を作成しました。
 
今回の展示されているのは、19世紀のパリの人びとをテーマとした「パリっ子の表情(8月30日~11月24日)」と「古代史」に関するものです。

 当時のパリ市民の普通の生活を鋭く風刺した作品は、思わず「なるほど、わかる、わかる!これはうまい!」と声を上げたくなる面白い表現がちりばめられています。特に、私はデフォルメされ表情-目、鼻、口に風刺の本質が表現されている思います。現在の私達からみても「あまり変わりばえがしない」人間の本質(精神)をズバリ見せられました。
 
また、それぞれの作品にはすべてドーミエのコメント(解説)が書かれており、面白さを倍増させています。たとえば、左図の場合は、「素晴らしきトロイアの煙吹く城壁の上で、神々の息子メネラオスは、贅なる供物が如き金髪のヘレネを強奪し、彼が王宮へ連れ帰る、慎みと愛で、ヘレネの姿はいよいよ美しく。」などです。

 ドーミエがこの古代のトロイの物語をつかって当時の何かを風刺しているのでしょうが、腹が出た二人の姿には思わず笑いがこみ上げてきます。  ドーミエに興味を持ちましたので、早速昨日アマゾンでドーミエに関する本ードーミエ諷刺画の世界 (岩波文庫) を発注したところです。

3) 柿衛文庫を楽しむ

 江戸時代は酒産業で栄えた伊丹は、一方で俳諧文化が花開き、頼山陽をはじめとして文人の往来が多くありました。このような中ではぐくまれた文化遺産を故・岡田利兵衞(俳号・柿衞) が収集したものを土台にしたのが柿衞文庫です。

 美術館は柿衛文庫と併設されていますので、今回は、この文庫を見ることにしました。
 もともと文学にはまったく興味がない私でしたが、芭蕉、西鶴、漱石、蕪村などの自筆の句短冊を見て、このような字を書いたんだなと興味を感じました。

 左図は松尾芭蕉の有名な俳句「古池や蛙飛込水の音」ですが、流れるような芭蕉の字は実に美しくしいですね。

 なお、同時開催で、今森光彦の写真展が開催されています。里山の美しい写真にあふれていました。





4) みやのまえ文化郷でくつろぐ

 美術館の庭を出て、左側に大きな古い館(左図)があります。それが、旧石橋家住宅と旧岡田家住宅の2つが並んであります。 

 どちらも伊丹が酒造で栄えた江戸時代の建物です。特に、岡田家住宅は、現存する最古の酒蔵で、重要文化財となっています。 

 家の中にはボランタリーの方々がおられ、目と目があうとすぐに「2つの家の歴史や伊丹」について優しく説明をしてくださいます。畳にすわってゆったりとこれらの説明を聞くことも楽しみの一つです。 

 現在は、「鳴く虫と郷町」というテーマでイベントが開催され、あちこちで虫の音を聞くことができます。なお、工芸センターのアクセサリーや陶器が直販されていますので、多少のお金を持っていかれることをお薦めします。素敵な焼き物やアクセサリーえお安価で購入することができます。
文化の香りいっぱいのアートシーンを楽しむことができるところです!
合掌 山さん

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