2008年9月21日日曜日

大阪市立美術館


 大阪市天王寺区にある大阪市立美術館を久しぶりに訪問しました。この場所は日本庭園「慶沢園(けいたくえん)」とともに1921年に住友家が美術館建設を条件に大阪市に寄贈したもので、1936年に開館している伝統のある美術館です。

 収集作品は主に大阪市民の寄付で8000点を超える収蔵品があります。現在これらの作品は、常設展で鑑賞することができます。
 
 1979年にこの建物は改修され、レトロ感覚にあふれた建物となっています。慶沢園、天天王寺公園と同じ所にあるので、一緒に楽しむことができます。では、これから、この美術館での5つの楽しみをご紹介します。



1)慶沢園(日本庭園)を楽しむ
 住友家が10年歳月をかけ、1917年に完成した小川治兵衛の作庭による林泉回遊式の日本庭園です。 

 この庭園を見るには、天王寺公園からトンネルを抜け、フェルメールの小径(愛称)の途中に慶沢園南口がありますので、そこから入ります。 

 大阪の都会の真ん中にこんな公園があるとはなんとも不思議な感じがします。都会の中のオアシスですね。 真ん中に大きな池があり、周りを周回できるようになっています。途中に小さな滝も作られており、心を癒してくれます。美術館に入る前にぜひ見ておきましょう。




2)企画展(佐伯祐三展)を楽しむ
 現在大阪市立美術館では、パリで30歳の若さで夭折した佐伯祐三(1898~1928)展が開催されています(9月9日~10月19日)。 

 佐伯の画業を5期に分けて、本人の作品139点、関係者の作品19点が展示されています。
  
 1.凝視する自己・自画像の時代(1917~24年)
 2.ヴラマンクとの出会い(第1次パリ時代 1924~26年)
 3.帰国時代(1926~27年)   
 4.燃え上がる情熱、パリ(第2次パリ時代 1927~28年)
 5.画家佐伯祐三、最後の三ヶ月。モラン、そして死(1928年)

 1人の画家の作品を139点集中してみていると、そこにはアーティストの苦闘の人生が見えてきます。パリでブラマンクから「アカデミック!」と一喝され、それを克服しようとした佐伯。確かにブラマンクの「雪の風景」と比較すると、佐伯の未成熟な部分が見えてきます。 

しかしながら、1928年の最晩年の作品は、ブラマンクの一喝を超えた頂点の作品が生まれてきます。

 それが、上の「煉瓦焼」です。 
 墨のような黒い三角形の屋根と縁取り、青い空とレンガ色の対比、細い線で描いた階段、平面の屋根と壁、遠近のレンガの階段が見事に調和しています。 この絵が一番私にとっては佐伯渾身の作品と思えました。さん然と光輝いている作品です。

 この作品に出会は私にとって人生の至福のときでした。 
 佐伯の自画像(1919年)の裏に次のような言葉が書いてあります。

 「 クタバルナ  
  水ごおりをしてもやりぬく  
  今にみろ  おれはやりぬく  
  やるぬかねばをくものか  
  死-病-仕事-愛-生活」 

 すさまじい言葉です。これらの作品を見終わると、佐伯の気迫に圧倒されて最後は疲れ果ててしまいました。

3)常設展でくつろぐ
 佐伯の気迫に疲れ果てた私は2Fの常設展へ行きました。そこには、日本近世写生画の大家の作品、円山応挙と伊藤若冲の作品、近世文人画の池大雅と浦上玉堂の文人画、そうして村上松園の「晩秋」をはじめとする近代日本画が展示されています。 

 これらの作品の前に立つと、不思議なくらい心がリラックスしてきます。佐伯の疲れを吸い取ってくれる力がこれらの作品にはありました。
 
 私が好きな作品は、松園の「晩秋(左図)」です。

 幼いころに見た母の姿を題材にした作品で、女性の品格の高さを見事に表現しています。私にとっては佐伯とは対極に位置する作品でした。見る人の心を癒す凄い作品です。




4)大阪市立近代美術館コレクションを楽しむ
 大阪近代美術館がまだ仮住まいをしているために、大阪市立美術館でこれらの作品72点が現在展示されています。 

 モジリア-ニの「髪をほどいた横たわる裸婦」をはじめとして、1900年代の質の高い作品がコレクションされています。 

 今回私が感動した作品は、チャック・クロース(1940年~ )の「ジョー(左図)1969年製作」です。最初はでかい写真(2.75mX2.145m)かなと思いましたが、実はアクリル絵具とエアブラシで描いた作品です。 

 これらの作品は「スパーリアリズムリアリズム(写実を超えた、迫真のリアリズム)」と呼ばれているそうです。

 1988年に半身不随となり車椅子の生活を余儀なくされていますが、現在も、絵筆を歯でくわえ、手に筆を縛り付けて精力的に制作活動をしている人です。 
 
写真を利用して、ドットレベルから再構成した作品は、リアリティを超えて不気味なものさえ感じます。


5)榴樹(ルージュ)でリラックスする
 美術館の2階には「榴樹(ルージュ)」という喫茶コーナーがあります。

 またB1には同じ名前のレストラン「榴樹(ルージュ)」があります。 

 昭和の雰囲気を感じさせる場所です。
芸術作品をみたら、これらの場所で、レトロな雰囲気に浸りながらリラックスをしましょう。


大阪市立美術館は、刺激と癒しに溢れたレトロ感覚の美術館です!特に、この秋は、佐伯祐三の芸術に対する強烈なエネルギーを感じることができますよ。

合掌 山さん

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