2008年5月30日金曜日

野外彫刻 神戸市ポートアイランド

今回は神戸市のポートアイランドにある野外彫刻を紹介します。
ポートアイランドは神戸の三宮の南にできた広大な人工の島です。そこには住宅、大学、企業、港湾施設等があり、多くの野外彫刻が展示されています。 





まず、三宮のポートライナー駅の「るる」を見ることからスタートしましょう。


新谷英子の「るる (1991年製作)」です。ポートライナー10周年記念として作成された作品で、ポートライナーのホーム(乗り場の中央)に設置されています。大きな筒状の円筒に3つのビーナスがレリーフのように作られています。伸びやかな手、美しく顔、実に魅力的な作品です。




中央公園駅でおりて、北公園にまず行きましょう。神戸を海から見ながら、公園内の3つの彫刻とみなと異人館(「旧ヘイガー邸)を訪れましょう。


そこには、神戸の暗い時代の鎮魂の碑があります。森下勲(1939年~ )の「港(神戸港港湾殉職者顕彰碑 1978年 製作)」という作品です。 神戸は日本有数の港ですが、一昔前の湾労働者は過酷な荷役作業でたいへんな重労働を課せられていました。そのために多くの労働者が亡くなり、その鎮魂を祈念してこの作品が製作されました。黙々と思い袋を肩に担いでいる労働者、しかも足が壁に埋め込まれています。座って何かを考えている人、凛として正面を向いて腕組みをしている人、長い棒をもって労働者を管理している人、当時の光景とその重苦しい空気が見事に表現されています。


そうして、中央公園に戻り、散歩道を通りながら、神戸市商工会議所を訪れます。そこには、柳原の代表作があります。近くの企業ビルを中心としてマルタ・パンの作品などが展示されています。

次にワールド記念ホールを訪れて、最後に先端医療センター駅で新谷の作品を見ます。島の中をゆっくり散歩しながら楽しみましょう。


上図はマルタ・パン (Marta Pan 1923~ )の「三つの部分からなる彫刻 神戸・ワールド本社ビル1984年製作」という作品です。以前札幌芸術の森の小さな池に白鳥とともに展示されていた白い作品が気になっていたのですが、その作品がマルタ・パンのものでした。マルタのテーマは「都市と自然との調和」です。 作品の白色の美しさと柔らかな曲線が、モダンな雰囲気を持っているこのポートアイランドと実にうまく調和しています。三つの作品ですが、こちら側に2作品、ビルの向こう側の入口にもう一つ展示されています。

ここで紹介できなかった作品は「アートを楽しむ山さんの美術散歩」にあります。

山さんの合掌 山さん

2008年5月19日月曜日

野外彫刻 神戸海岸通り

 神戸の海岸通には、明治時代に外国人居留地海岸通と呼ばれた所で南側を東西に走る道路に沿って24の作品が展示されています。スタート地点は明治維新の立役者(勝海舟や坂本竜馬等)を生んだ海軍操練所跡です。最初に海岸通りに沿ってまず、5つの作品を見ましょう。次にメリケンパークをまわります。海辺の公園に強大な鯉(フィシュ・ダンス)をはじめとしてユニークな作品が強大なスケールで展示されています。神戸の空気を味わうには絶好の場所です。次に、海岸通に戻り、神戸を代表する新谷一家の緑の泉を見て、最後に、エスタシオン神戸(結婚式場)で日本を代表する3名の彫刻家を楽しみます。今回は多少距離がありますが、神戸らしさを味わうことができる山さん一押しの場所です。


今回はその中から、3つの作品を紹介します。
最初は峯田義郎(みねた よしろう、1937年~)の「THE HORIZON'88(1988年 製作)」作品です。 

峯田の言葉に次のようなものがあります。 「若い日、物質に人間の内面を語らせるヒトの手技に驚き、その不思議な操作に魅了されて彫刻家を志しました。しかし存在する物の不可解な魅力とは実は夢を追わせる魔力であったことに気付かぬまゝ、自分の心を托す物のかたちを探す終わりない旅を続けることになっていました。」 
峯田のテーマのひとつは「手」なんですね。この作品も「手」の表現が独特です。どのような内面を表現しているのでしょうか。腕を曲げてまっすぐ正面を見ている少年、元気に飛んでいくハトたち。私には希望に燃えている少年の心を表現しているように思えます。

2番目に、 流政之(ながれ まさゆき 1923年~ )作の「神戸海援隊  1991年製作)を紹介します。
この作品のプレートには次のような文章が書かれています。


「1863年から65年にかけ神戸小野浜に勝海舟、坂本竜馬らによってつくられた海軍操練所が存在した。武士、町人、農民をとわず若者達が大洋に夢をはせ経済、科学など多くのことを学んだ。夢をはたせず志なかばに倒れていった若者達を神戸海援隊と名づけその短い青春の夢をここに刻む」

 外観はイースター島のアモイ像によく似ていますが、海を見ながらこの作品を見ると幕末の若者達の「志」を実感でき、心が熱くなってしまいました。


最後は、 環境造形Q(増田正和、山口牧生、小林陸一郎の3人で結成された 1968年~1988年解散)の「メリケンシアター 1987年製作)という作品です。
 

神戸の花隈(神港倶楽部)で日本で始めて「活動写真」が上映されました。これを記念して作られた作品です。
中央に大きな真ん中がくりぬかれた石(スクリーン)があります。その手前に、小さな40個の丸い石が放射状に置かれています。その石ひとつひとつに、有名な俳優の名前と生まれた年(例 マリリン・モンロー 1926 )が彫ってあります。その40名の俳優を選定した人は神戸出身の映画評論家の淀川長治です。
 中央のスクリーン石に前に立って、40名の俳優に囲まれ、自分だけの風景(映画)を楽しみませんか。 

ここで紹介できなかった他の作品は「山さんのアートを楽しむ美術散歩」で見ることができます。

合掌 山さん


2008年5月15日木曜日

本物のアーティスト 田中一村 

最近は田中一村についての本や映画「アダン(DVD)」をみたりして、一村を学んでいます。
これを巷では「一村病」と呼んでいるそうですが、見事にかかっています。

ずいぶん前ですが、NHKの「日曜美術館」で田中一村の番組があり感動していたら、
ちょうど西宮市立大谷美術館で「田中一村展」が開催され、見に行きました。

そのときの感動は今でも忘れることができません。
作品を見ていると、涙が自然に出てくるのです。

奄美の自然(植物、鳥、魚など)を中心に描いているのですが、作品の向こう側から私の心に切々と訴えてくる何かがにあるのです。

一村は、お金や地位や名誉のために描くのではなく、己の良心に基づいて、命をかけて作品を描き続けた人です。

きっと奄美の自然を通して、一村は人間世界を超えるものを描いたのではないでしょうか。小林照幸はそれを「神を描いた男」と表現しています。

上の絵は「アダンの木」という作品ですが、浪の音が聞こえてきませんか。

この浪は生きているように感じませんか。

私の心にはこの生きている浪の音が確かに聞こえてきます。

ひとつの芸術作品がこんなにも凄いものかと感動を超えた経験ができるーそれが一村の作品です。

奄美大島には、近年田中一村の作品を展示している美術館ができたそうです。
今年中にはぜひこの美術館で一村の作品にもう一度出会いたいと思います。


興味があれば、下記をクリックしてください。

     田中一村記念美術館

また、一村の生きてきた人生を知るには「アダン」という映画(DVD)をお勧めします。
私も購入しました。画家であり、俳優である榎本孝明の演技は、一村の壮絶な人生を見事に演じています。

一村に関して多くの本が出版されています。

・田中一村 『田中一村作品集―NHK日曜美術館「黒潮の画譜」』 日本放送出版
・中野敦夫 『アダンの画帖―田中一村伝』 南日本新聞社編 、小学館
・小林 照幸 『神を描いた男・田中一村』 中央公論社(〈中公文庫あり)
・加藤邦彦 『田中一村の彼方へ―奄美からの光芒』 三一書房
・『日本のゴーギャン田中一村伝南日本新聞社〈小学館文庫
・湯原かの子 『絵のなかの魂―評伝・田中一村』 新潮社
・『田中一村作品集《新版》』日本放送出版協会

私は、黒潮の画譜、神を描いた男、日本のゴーギャン田中一村伝、絵の中の魂を購入しました。


インターネットでも一村に関するサイトが多くありますが、下記のサイトをお勧めします。

1)一村の作品集(孤高の日本画家「田中一村」)
2)一村の本・全般田中一村と私
3)奄美大島と一村(田中一村超マニアックコース
4)一村と家族・人生(田辺サイト

合掌 山さん