
この美術館は、1998年3月に開館した新しい美術館です。
展示作品は、彫刻家の佐藤忠良、日本画家の平山郁夫、陶芸家の樂吉左衛門の3人の巨匠の作品だけに絞り込んでいます。
特別展示会を開催する美術館が多い中で、常設展示で勝負をしているこの美術館は実にいいですね。
最初は、佐川というイメージが私の頭の中で先行しており期待はしていなかったのですが、すばらしい美術館でした。
特に今年9月にオープンした樂吉左衛門館ー守破離は空間・光と闇・陶芸の3つのバランスが最高の芸術空間を構成しています。お勧めの美術館です。

楽しみその1) 水庭と建物を楽しむ

まず、受付は美術館の外にあるゲイトにありますので、そこで入場券(千円)を購入し、入ります。
美術館全体は、水庭(人口池)で囲まれ、水に浮かんでいるように見えます。
最初に佐藤忠良の両手を大きく開いているビーナスと蝦夷鹿が出迎えてくれます。

レストランの待合椅子に腰掛けて、ゆっくり見るのは気持ちがいいものです。
その後で、美術館の中を周回してみませんか。
長い廊下は、スリット照明と水庭の光の反射で美しい空間を作り出しています。
その光をゆっくり歩いてあじわいましょう。
楽しみ その2) 佐藤忠良館(ブロンズの歌)

帽子・夏やボタン等すばらしい作品が展示されていますが、今回私が紹介するのは「建築家(1957年)」です。
佐藤は弟の建築家忠行の顔を作品として制作しました。
作品の背後には次のような佐藤の言葉が書いてありました。
「弟(建築家)の顔を制作したときも、デスマスクみたいに、石膏の中に顔をつっこんで型をとってやれば、顔の寸歩どおりになるはずです。しかし、彫刻家は粘土で自分なりの造形する。弟の過去と今、そしてこれからの変化、考え方、生き方が顔になにかプラスするかもしれない、マイナスするかもしれない、と自分なりに想像して、おこがましくも過去と現在、未来までも動かない粘土に語らせようとするのです。」
日本人の独特の顔を内面から捉え、その人の人生の過去、現在、未来までも表現しようとした佐藤の心意気には凄いものがあります。
彫刻家はこのような視点で作品を制作するということがじっくり感じることができる作品です。
顔の前で、鑑賞者として、この作品の過去、現在、未来をいろいろと想像しながら見ることも実に楽しいものです。
楽しみ その3) 「平和への祈り」 平山郁夫館でシルクロードを味わう

シルクロードをテーマとして制作された作品300点の収集の中から、現在約50点が展示されています。広島での被爆体験をした平山の作品は、テーマはシルクロードですが、心の深いところで平和を祈る魂の声がしてきます。
展示室はそれぞれのテーマごとに、西アジア、中央アジア、インド、中国、日本別れて展示されています。
私が感動した作品は、上図のインド・ザイサルメールのアンベール城を描いた「故城下村民帰牧図(2002年)」です。
城のどっしりとした重量感と仕事が終わって家路につこうとしている農民たちと牛の姿が描かれています。壮大な風景の中にもくもくと歩いている農民たちの姿が対照的に描かれています。
柔らかな光の中にも、永遠の時間を感じさせる作品です。
そして、全体の黄色と空の青がなんともいえないバランスをかもちだしていますね。
この作品を展示している部屋は、現在大作3点のみが展示され、それをじっくり鑑賞するための椅子が用意されています。そこに座ってゆっくり大作を鑑賞するものいいですね。
楽しみ その4) 樂吉左衛門館 守破離(守りをつくして 破るとも 離るるとても 本をわするな)

15代樂吉衛門は、陶芸家自身が自分の作品をどのような環境で展示したらその芸術性を最高度に発揮できるかを創案し、この館を建てました。
エントランスを入り右へ進んでいくと、そこに地下行くための階段があります。 階段を通り抜けると、大きな暗い空間が広がり、木

そうして、その先にほとんど照明がない暗闇の中に、陶芸作品だけに光をあびせて展示しています。
作品の美しさと演出に、私は思わず「これは・・・・・・」とため息をついてしまいました。

そのような作品の中に、竹を切った筒の中に一輪の花が飾られていることにほっとした空間を見つけました。
このような完璧に考え抜かれたこの空間は、私を沈黙の中に引きずり込んでしまします。
● アクセス
JR琵琶湖線守山駅より近江鉄道バスに乗り換え(約30分 @450円)
合掌 山さん
1 件のコメント:
故城下村民帰牧図で描かれているアンベール城はジャイサルメールではなく、ジャイプールにある城です。私は2回訪れており、ほぼ絵と同じ構図で写真を撮っていますので間違いありません。正面に見える城に登る坂道を象の背中に乗って訪問しました。ジャイサルメールの城は周りに人家があってごちゃごちゃしています。
コメントを投稿