2007年10月26日金曜日

姫路市立美術館の楽しみ方

右の写真は、まさに、圧倒的なパワーで上から剣を振り下ろす瞬間をブルーデルが作品に作り上げた「モントーパンの戦士」1898年~1900年)です。

今回は、この作品が設置されている「姫路市立美術館」の楽しみ方を紹介します。

この美術館は、明治末に建築され旧陸軍が兵器庫及び被服庫と使用していたものを、戦後市役所として利用し、1983年に美術館として再生した建物です。
そのために、外観は赤レンガで作られて、その色は世界遺産の姫路城の白と申し分のない美しい対比を持っています。

1)その楽しみ方1 姫路駅から散歩しながら美術館に行く

JR姫路駅を降りて、姫路城を正面に「大手前通り」があります。

この通りは、「日本の通り100選」に選ばれた美しい通りです。道幅は50mあり、両側の歩道は、野外彫刻が20体ほど設置され、それをゆっくり味わいながら姫路城へ約1kmを散歩をしましょう。

15分ほど歩くと、目の前に姫路城の正門があります。その門を抜けて見る姫路城はまさしく「白鷺城」ですね。
城の右側に小さな動物園がありその間を通り抜けると美術館があります。


2)その楽しみ2 庭園を散歩する

美術館の前は、約1万mの庭が広がっています。そこに、野外彫刻が13体設置されています。 正面には、最初に紹介したブルーデルの作品があり、その前に木内克の「エーゲ海に捧ぐ」が配置されています。

右の写真は、美術館を正面にして、庭園の右側に展示されているのが、桑原巨守(くわはら ひろもり)の「姉妹」です。

「姉妹」の暖かい家族の絆を感じる作品です。見るものの心があったかくなってきます。すがすがしい気分になります。

野外彫刻の問題点のひとつは、メインテナンスをどのようにするかにあります。野外にあるわけですから、自然の影響(鳥の糞の汚れ、落書き、傷つけ等)を直接うけます。

しかしながら、庭園にある作品は、すばらしいメインテナンスがされていました。それはこれらの彫刻をメインテナンスしているボランティアグループのSWGの存在があると知りました。いつもきれいな作品を見てせていただいて、感謝します。SWGにもなさん、ありがとうございます。


3)その楽しみ3 常設展示室「國富奎三コレクション」

姫路の医師である國富奎三より約50点の絵画が寄贈され、現在その中の29作品が常設展示されています。

コローの湖に始まり、マティスのジャズまで、近代から現代にかけてのフランス絵画が作成年代順に展示されています。

今回私が好きになった作品は、ディフィの「ミシェル・ビヌーの肖像」です。

背景のブルーがとても印象的です。全体の50%はブルーです。それとシャツの白、チョッキの赤がとてもきれいです。

この少年のどことなく憂い憂いらしさが感じられるさわやかな絵ですね。


姫路市美術館の特徴にひとつとして、郷土の画家とベルギー絵画の収集にあります。デルヴォーやマグリッドをはじめとして多くの作品が収集されていますので、今後の常設展示が楽しみです。


4)その楽しみ4 企画展「シュルレアリスム」

9月15日~10月28日まで、「シュルレアリスムー謎をめぐる不思議な旅」と題して、代表的な作品約130点を展示しています。

時系列にシュルレアリスムを見ることが出来るように作品が展示されています。有名なダリの絵(三角形の時間)やマン・レイの写真、アルプの彫刻など、これほど多くのシュルレアリスムだけの作品を見ることができるのは痛快です。

しかしながら、対象がデュシャンの言うところの「網膜に映っている像」を超えようとしている作品群です。
すなわち、無意識の世界を描いていますので、鑑賞者の私たちにはなかなか理解すること出来ません。

人間の「目から見た風景」からの開放という視点はすばらしいのですが、そうであればあるほど、鑑賞する私たちの理解を超えたことになるので、見るほうの私も不思議な気持ちになってします。
右の絵はマグリットの「現実の感覚」というテーマの作品ですが、空中に浮遊しているのは、地球なのでしょうか?


4)その楽しみ4 ミュージアムカフェでくつろぐ

駅から大手前通りを通り、姫路城を散歩すると多少疲れます。まずは、ゆっくり休むことが必要です。

美術館の入り口に「ミュージアムカフェ」があります。独立した部屋ではありませんが、ちょっとしたコーナーの喫茶店です。

今回はアメリカンコーヒーを頼みました。
お店の人がサイホンで一杯一杯丁寧に作られていたのが非常に印象的でした。そのために、コーヒーは、程よい苦味でおいしくいただくことができました。

● アクセス JR姫路駅または山陽電車姫路駅から徒歩20分
   歩かれることをお勧めしますが、バスは山陽電車姫路駅下から
   土曜・日曜はループバスが便利です(100円)。

合掌 山さん

2007年10月21日日曜日

西脇岡之山美術館の楽しみ方

先日、昔の新聞の切り抜きを見ていたら、横尾忠則の日経新聞(2006年2月2日 夕刊)インタビュー記事に偶然出会いました。

その中で横尾は、
「今では流行、潮流に逆行しても怖くない。それまで踊らされた情報も、自分の本姓を見極めてからは興味の対象外です。
テーマや様式がばらばらでも納得できるようになった。ようやく自分の本姓に出会ったといえます。これから迷うことがない。」

これはすごい言葉だと思い、すぐに現在の横尾の絵を見てみたいという思いに駆られました。早速有給休暇をとって、ちょうど日本の真ん中(へそに位置している)にある横尾の出身地、西脇市の西脇岡之山美術館にいきました。

今回はこの美術館の楽しみを紹介します。

その1 建物を楽しむ

日本へそ公園駅を下車すると、目の前に昭和59年に磯崎新設計で建てられた美術館があります。

本館正面はギリシャ神殿を思わせる巨大な円柱が左右に4本あり、汽車をイメージしたと思われるアーチ型の屋根が続いています。
右には、ビラミッドの屋根を持つ瞑想室(メディテーションルーム)と右側にはアトリエがあります。

この美術館そのものが一つの芸術作品となっています。
入場する前に、美術館をゆっくり歩いて1周散歩し、この建物の雰囲気を感じることも気持ちがいいものですね。

入り口の階段を上がると、左手に受付があり、そこで入場券(310円)を購入して、展示室に入りことができます。

展示室は直列に3室あり、間に2つのガラスタイル床の部屋があります。
そのガラスタイルの部屋には、ブルーの鮮やかな空間が広がっています。
上の写真は展示室から入り口の方向へとったものです。

それぞれの展示室は、油彩の銭湯の作品群と最新作の温泉主義の温泉ポスターが展示されています。温泉主義のポスターは横尾の自由な世界があり、海底1万マイルのネモ船長とピカソの遭遇や三島由紀夫の自衛隊でのアジ演説等、時間と空間を越えた自由奔放な横尾ワールドを感じることが出来ます。

なお、温泉主義に関する横尾の紀行文は下記をクリックしてください。
横尾忠則の温泉主義



その2) 横尾忠則の絵を楽しむ

現在美術館では、「TDANORI YOKOO HOT BATHー未完の連鎖」というテーマで最新の油絵が展示されています。

ここではその中から、

「乙女湯(へちまと壷)2004年作 2273mm×1818mm」を紹介します。

なにやら5人の乙女が四角の風呂から出ようとまたは入ろうとしています。髪形を見ると日本髪あり、現代風あり、金髪ありで、どの時代かはわかりません。上部に扇風機があるので、現在かもしれませんが、制約にとらわれていません。

何でも描きたいようにするのが、今の横尾絵画なのでしょう。

この絵には、展示会に出品して凄さを見せてやろうとする心はまったくありません。
ただ、自分が描きたいものを楽しみながら黙々と描いているーそのように感じる作品です。
ぎらぎら感がない、今の横尾が私にはなんとなく親しみ感じます。


その3) 瞑想を楽しむ
本館の右側に瞑想室があります。
ドアを開いて中に入りましょう。

25㎡の小さな小さな部屋です。
中央に大きな黒い石があり、
周囲がガラスタイル、
屋根はビラミットの形をしています。



石の周りに座るか、または寝っころがって
ピラミッドパワーを感じませんか。

安らぎ音楽などをICレコーダーに入れて、
ここでその音楽を聴きながら、静かに瞑想できることは最高の楽しみですね。

この部屋を作らなければ、もっと大きな美術館を作れたそうなのですが、横尾のたっての希望で作られた部屋です。十分に味わいましょう。

そのためにはジーパン等のズボンでこられることを勧めます。
土日以外はほとんどの訪問者は訪れないとと思われますので、
1人でまたはペアでくつろぎの時を過ごすことができます。

その4) おいしい空気とゆったりした時間を楽しむ


ここには、お茶を飲むための喫茶店もレストランもまったくありません。自動販売機が1台あるだけです。

そのかわり、そこにあるのは、新鮮でおいしい空気とゆっくりとした時間です。

忙しい中で、毎日同じような生活リズムで過ごしている私たちにとっては、「おいしい空気とゆっくりした時間」を感じることは贅沢なのかもしれません。

この写真は、日本へそ公園駅のホームから撮った写真です。なお、レストランがありませんので、汽車へ行かれる方は、必ず、水と弁当を用意をされてお出かけください。

アクセス  JR加古川~JR西脇市駅~JR日本へそ公園駅
  
西脇市駅から日本へそ公園駅までは8分の時間ですが、待ち時間が長いので(2時間に1本程度)事前にネットで列車の時間を調べて行くことが大切です。

私は、今回大阪駅を12:30分に出発して、日本へそ公園駅に着いたのは、16時10分という長旅でした。
大阪から東京までの時間と同じくらいに到着にかかりましたので、くれぐれも時刻表には注意して出かけてください。

ちょうどJR加古川駅で、横尾の「Y字路」の絵をペイントしたラッピング列車に出会いました。最近のJRは粋なことをするものです。(左の写真)

合掌 山さん