2010年2月14日日曜日

絵画の庭-町田久美の木馬

現在大阪国際美術館(~2010年4月4日まで)で開催されている「絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から」を見に行きました。

現在活躍している日本人の28名のアーティストに焦点を当て、約200点が美術館のB2・B3を使ってゆったりと展示されています。

それぞれの作品が個性的で楽しんで見ることができます。

が、なにか軽い感じがしてなりません。心にぐさりと突き刺さるモノがないです。

これが現在日本を表現しているものだと時代の雰囲気を感じつつ、私のお薦めの作品は町田久美の「木馬」(左図)です。

縦140cmX横113cmの大きさの作品ですが、最初見たときは聖母子像のように見えたのです。聖母マリアの肩に幼子イエスが肩車され、慈愛にあふれた二人の表情に惹かれました。

しかし、近づいてみるとなにか違うものが感じられるのです。
まず、肩車されている子供のような人間の両目から、涙があふれ出ているのです。その涙は、硬くてべっとりとした、まるで竹を縦に切り裂いたのような表現で、肩車した人間の顔を滑り落ちています。

この涙はなんなのでしょうか?
私は妄想を広げてみました。

もし神の子イエスと解釈すれば、自分の運命を知ったその涙なのかもしれないと。

更に見ていくと、塗り重ねた太い線でやわらかい肌と肌の触れ合いを見事に表現し、微笑ましいエネルギーがでています。

しかし、タイトルは「木馬」のなです。肩車している人間は木なのでしょうか?

また、じっくりと目をみると、お互いの目線はあっていないのです。
見つめ合っていないことに私は驚きました。
微妙にお互いの目線が異なっています。

私たちは、2つの矛盾するものが目の前にあると不安になります。

作品全体からかもちだすやわらかさ、親密さ。
一方詳細に作品をみると、異なる目線、涙、木馬と言う非人間的タイトル。

この作品は見ているものを不安に誘います。
不安のままでは苦しいので、この不安をなんとか解釈し、解消しようとします。
そのために、自分の想像力を駆使して自分の都合のいいように解釈せざる
を得ないように追い込みます。

町田の作品は、この微妙なアンバランスを作品を通じて私たちに突きつけ、
そして、私たちの想像力に火をつけます。

合掌 山さん